インドの取引先に98ctの天然エメラルドを委託されました。
天然ならではの、濃淡のあるとても美しい石でした。
美しい海をエメラルグリーンと例える理由がよく理解できました。
しかし、デザインするとなると表の大きさは何とかなりますが、高さが問題になります。
指輪にしても、ペンダントにしても、無理があります。
本当に王冠位にしか使えないです。
冗談で、あるお客様にご覧頂いたところ、ご購入なさると言われ心底驚きました。
そしてもっと驚いたのが、愛馬が競馬に出走するときにおでこに付けたいとのことでした。
まず、98カラットの天然エメラルドを留めた経験のある職人がいない。
職人に相談すると、工具がない。
仕事だからといって何でも引き受けるな!と怒られました。
なんとか職人さんを説得した後は、額側とこのモチーフをどうとめるか?
おそらく、デザイン専門学校でもこれは教えてないし、前例がないと思います。
馬は時速60-70kmで走ります。それでも外れない工夫を考える必要がありました。
ふと自動車レースではガムテープで補修しているのを思い出し、ガムテープは無理ですが、タコ糸で縛りつけることにしました。
そしてお次は、馬具屋さんの打合せ。
馬具屋さんも前例がないので、あなたに任せると逃げ腰でした。
次はJRA(日本中央競馬会)に、光る物を出走中に付けて良いかの許可をもらいに行きました。
壊れても責任持たないし、割れてもレースを中断して探さないという条件で、承諾してもらいました。
最後にお客様に70kmの速度で、砂利が当たれば割れますが、どうしますか?と聞くと、責任は問わないから進めるように言われました。
透明のガムテープを張って、出走しました。
しかし騎手と調教師が、レースに集中できないから二度とやらないで欲しいとのことで、一度切りの使用でした。
ちなみに私の愛犬に付けると以下のようでした。
このエメラルドジュエリーの競走馬装着は東京スポーツに掲載されました。
プライベートジュエラーならではの、とても面白い仕事でした。